エドュアールおじいさまの残してくれたワインの素晴らしさを、ようやく理解できたような気がしました。
「ねぇ、ランス。子供にさわるといけないから、ひとくちしか飲めなかったけど。私、今日のワインの味を一生忘れないわ。」
醸造元の娘としてワインと共に生活してきたマルトですが、ワインにこんな不思議な力があるとは思いもよりませんでした。
マルトの吐く息は白く、鼻の頭は赤くなっていましたが、少しも寒そうではありませんでした。ウインカーは自分の襟巻きを外すと、マルトの肩にかけてやりました。
マルトはお腹に手をやりました。
「この子にもきっと伝わったわよ。おじいさまやご両親のあなたへの気持ち。そして伯母さまたちや、私達みんながどんなに愛情に満ちた日々を重ねてきたか。」
辛かった日々も今は遠く、決して無駄ではなかったと信じられるのは、心が通い合う
マルトが側にいるからかもしれません。ウインカーはマルトの言葉に満たされていきました。