ヴィンテージワインの話

ヴィンテージワインの話

液漏れについて

ヴィンテージワインの特徴

毎年多数の古いヴィンテージワインを取り扱うと、中には以前に液漏れしたと思われるボトルもあります。
ワインが漏れた跡はコルクを覆うキャップシールの天面や側面、そしてボトル表面やラベルに痕跡が残ります。
これは瓶の形状にも左右されるようで、ボトルの首がボルドータイプのように円筒形のものはコルクとボトルの接する表面積が多いので液漏れしにくいです。

一方でブルゴーニュタイプのように少しずつボトル径が広がっている円錐形のものは長いコルクを使用しても途中で接する強度が弱くなるので若干漏れやすい傾向にあります。
また糖分をたくさん液中に含むワインも膨張率の関係か、液漏れを起こしやすいように感じます。

さて、その中身ですが、漏れた跡があっても中身の色調が健全であれば、ほとんどダメージを受けていないと思われるものが大半です。
特に「かなり以前の若い頃に漏れと推定できるボトル」は試飲してみても、非常に美味しいことが多々あります。

熟成期間中に偶発的な要素で漏れてしまったのでしょう。
また液漏れしたものが健全かどうかの判断ですが、まずは液面の高さ(目減りの量)でおよその判断が付きます。
それ以上の推測は古いビンテージワインと日頃接している中で自然になんとなくでも身に付くものだとも思います。

リコルクについて

リコルクとはシャトーにて古いヴィンテージワインのコルクを打ち直す作業のことを言います。
良質なコルクであってもワインの強い酸性を密封した食物繊維のコルクは30年程度でやはり弾力性を失うので打ち変えられる必要も出てきます。

また同時にシャトーのセラーで管理されてきたワインの目減りが今後もきちんと熟成できるようにする目的で、目減りのボトル差(バラツキ)を補正する為にもリコルクがなされることがあります。
そしてまたリコルクされた場合には正面のラベルとは別にボトル裏にもラベルが貼られ、その旨が記載されているボトルも見かけます。
この「リコルク」に対する評価はワイン愛好家で違うようですが、当サービスではむしろ「経年保管されたワインの中身の保証が近年再度行われた証」として捉えています。
リコルクされたボトルでも目減りの量が調整されずにそのままの場合も多々ありますので、生産者でもリコルクへの考え方や姿勢の違いを感じます。

目減りについて

熟成中のワインはコルクの微細な繊維質を通じて外気と静かに交流していますので、年月とともにワインが少しずつ減少します。
またコルクにはこの作用があるのでワインと空気の中間に密封されても繊維の弾力性を失わず熟成させる機能が保てています。
当サービスでは経年のワインを扱うワイン商が用いる次の言葉でその減少量(目減り)をお知らせしています。
これはコルク栓から下に向かって下がって目減りを表現する専門用語で、ボトルコンディションのひとつです。
なお、ボトルに密封されたコルク繊維はコルク一つずつ微妙に異なりますので、同じ歳月を過ごしたボトルでも液面に差が出ます。

満量(high fill)

いわゆる満タンです。液量の減少がほとんど見られない液面の高さです。

首の途中まで減少(into neck)

ボトルの首の中に液面があり、首下から始まるカーブには至らない液面の高さです。
経年のワインではとても健全な高さです。

首の付け根まで減少(base of neck)

ちょうどボトルの首と肩の付け根に液面があることを指します。
経年のワインではとても健全です。
一般にこの高さでは特に問題が発生しません。

首の付け根からさらに少し減少(very top shoulder)

ボトルが膨らみ始めたあたりまで液面が下がっています。
このぐらいの液面の高さの商品も多数あります。

肩の曲線の丸みが反転するくらいまで減少(top-shoulder)

ボトル曲線が膨らみ始めたあたりまで液面が下がっています。
20年以上経年のワインでは普通で、歳月相当の目減りと言えるでしょう。
健全なコンディションです。

肩くらいまで減少(upper-shoulder)

ぱっと見て、「こりゃ、すこし少ないね」と感じる高さでもあり、
中身のコンディションが気になり始める目減りです。
30年~40年経年のボトルでは、バラツキの範囲ですので慎重に中身の推測判断をしています。

肩くらいまで減少(mid-shoulder)

upper-shoulderより下まで下がっています。
ボトルの曲線がほとんど終わる辺りの高さです。
ここまで低い場合には中身にリスクがかなり伴います。

肩のより下くらいまで減少(low-shoulderまたは below low-shoulder)

ついにボトルの膨らみがないまっすぐの辺りまで下がっています。
ここまで低い場合には中身にリスクがかなり伴います。

ヴィンテージワインの液量

色調について

一般的に赤ワインが歳を重ねると、濃くて深い赤紫系のルビー色は、ルビーガ?ネットに転じ、次第にオレンジ・茶系色を帯び、その後はレンガ色、最終的には黄褐色の薄いピンク系になっていきます。
古酒の色調はヴィンテージの出来、年数の経過などによって特徴が現われ、保存状態に大きく影響されます。
透明なグラスに注がれたワインなら容易に比較することはできますが、ボトルの外から見るとなると少々コツが必要です

飲み頃について

飲み頃感には個人差があり、例えば「アメリカ人の飲み頃感」と「日本人の飲み頃感」は同じとは限らないようです。
「ワインを飲み慣れていない人」と「飲み慣れた人」でも、同じワインへの評価は異なります。
その理由は食生活の違いやワインへの嗜好、そして酸味や味のボリュームに民族の好みがあるからではないでしょうか。

また経年保管される年号ワインは優良な銘柄の、さらにごく一部の銘柄だけになっています。
保管されるかどうかはワインの長い歴史に基づく経験則からだと推測されますが、そのクラスのワインの多くが約2年間の熟成期間を良質な樽の中で過ごした後に瓶詰めされて世に出て行きます。

そしてまた、そのようなクラスのワインは最新の年号で市販されてた数年間は、若々しく肉付きも良く、素晴らしい果実味やバランスなどが銘柄固有に楽しく飲めます。
その後は重厚な果実味が隠れる時期や、酸味と渋みが目立つ気難しい時期に入ると言われています。
ブルゴーニュ地方のワインでは酒質が安定するまでに瓶詰めから10年間、ボルドー地方のワインでは15年間以上は必要とされており、その期間中はワインのコンディションに波があるようです。
更に年数を重ねると、極上の状態としての素質を十分に発揮し、そしてまた緩やかながらも気難しい時期と飲み頃が何回か繰り返される一生を送るとされています。
熟成できる期間は銘柄や作柄でも異なり、100年以上も熟成し続けるワインがあることも知られています。

ラベルについて

ヴィンテージワインのラベル

近年、ボルドーの有名なシャトーは、ビン詰め業者に依頼せず、自分のシャトーでビン詰めすることが多くなっています。
これを「シャトー元詰」と呼んでいます。
「mis en bouteille au chateau ミザン・ブティーユ・オー・シャトー(シャトー元詰めの意味)」と記載されているのがまさにそれです。

しかしながら今でこそ当たり前の感のする「シャトー元詰」ですが、古い年号のワインにはそうでないものがたくさんあります。
生産者からボルドーの街のワイン商へ樽ごと運ばれて瓶詰めされたものや、遠くイギリスやベルギー・オランダなど他国に樽ごと輸出され、そこでビン詰めされたものもあります。
もちろんラベルはシャトーのオリジナルラベルではありません。

また一般に古いワインのラベルは一部が破れていたり、多少の薄汚れ汚れているもの、そして全体が色褪せているものの方が多数あります。
特に金色を使ったラベルで経年保管されたものの中には、金色の部分に緑青(ろくしょう:銅を含む金属が錆びて青みがかる状態)に変化しているラベルもあります。
なお、ラベルが完全に剥がれて失われているものはキャップシール(コルクを保護している金属のフタ)を剥がしてコルクに焼印されている情報を読み取り、年号や生産者を特定します。

オリについて

ヴィンテージワインのオリ

経年保管されたワインの多くは保管年数と共にオリを増していきます。
この現象はワインが瓶熟(変化)し、色調と渋み(タンニン等)を失うかわりに、化合物がオリとなって沈殿し複雑な味わいが増すことを意味します。
出来の良いヴィンテージほど色調とタンニン等の成分が多く含まれていますので、色調と同様にヴィンテージの出来、年数の経過を判断する目安になります。
しかし、醸造家の考え方や製造法の違いもあり、オリの多少でワインの優劣を単純に論じることも出来ません。