ウィンカー物語その5

その5

年号ワインを前にして、普段はなかなか口に出せなかった感謝の気持ちを、伯父さんは伯母さんに素直に伝えられました。

ふたりの結婚を、あのおじいさまが反対していたなど、思いもよらぬ話が飛び出し、ウインカーもドミニクもマドレーヌもびっくりしました。

父親の反対に負けず、幸せな家庭を築いたふたりの30年の歴史の貴さを、今はそれぞれ独立して家庭を持ちえたみんなは、身にしみて感じました。

ほどなく、マリー伯母さんに笑顔が戻りました。
「お祝いの席で泣いたりしてごめんなさい。

私たちが結婚した年のワインを見たら、いろいろなことを思い出してしまったの。

私はお父様を困らせてばかりいたから。

ウインカー、お姉さまの代わりにあなたを満足に世話も出来なかった私なのに......。

ごめんなさいね。こんな素敵なプレゼントをありがとう。
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あなたのご両親が早く亡くなったのは私もとてもつらかったわ。

私はアルフレッドや子供に支えてもらったからよかったけれど、ウインカー、あなたは随分寂しかったでしょうね。

あなたのお母さんになってあげたかったのに、なかなか話せなかったわね。」

娘の幸せを願って大事に保管されていたであろうワインを目にし、マリーは時を経て再び父親の愛情にも深く触れたのでした。

涙がこぼれないように必死で堪えながら、膝の上で握りしめていたウインカーの手に、マルトの手が重なりました。

「私たちの家族の30年間に乾杯!」
アルフレッド伯父さんがワイングラスを掲げてお祝いが始まりました。

エデュアールおじいさまのワインは、とても優しい味がしたように思いました。

マドレーヌが持参した、手作りのチーズやハムも格別でした。

ウインカーたちはこれまで聞いたことがなかった、伯母夫婦が恋に落ちた時の話、亡くなった両親との思い出話などを聞き、その日は忘れられない一日となりました。
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