朝日新聞での掲載記事

朝日新聞での掲載記事

ヴィンテージ大吟醸『歳月』について朝日新聞 埼玉版に掲載されました。

ヴィンテージ大吟醸歳月

ビンテージ大吟醸 ネットで酔う
(朝日新聞 より抜粋紹介)

秋の夜長、少し変わった日本酒で、季節の味覚を楽しんでみませんか――。長期熟成酒の楽しみ方を知ってもらおうと、熟成させた大吟醸酒を仕込んだ年ごとにワインの ようにそろえた「ビンテージ大吟醸」を、朝霞市の和泉屋酒店が販売している。ビンテージワインをネット販売する酒店と、長期熟成酒を扱う酒蔵がタッグを組み、全国的にも珍しい「古くて新しい酒」の販売となった。

「歳月」の名で販売している大吟醸酒は、栃木県那須烏山市の島崎酒造が熟成しているうち1995~2015年のもの。1本500ミリリットルで税込み3240~1万4472円。

低温熟成された大吟醸酒は、特有の華やかな果実のような香りが、7~8年目を境にバニラやナッツのような香ばしい熟成香に。深み、厚みが増して余韻が残るようになるという。「吟醸酒は雑味がないので、香りの変化がわかりやすい」と島崎健一社長(47)。

島崎酒造は嘉永2(1849)年創業の「東力士」の銘柄で知られる。蔵元が味と技を競う全国新酒鑑評会に出品するため、古くから大吟醸酒を造っていたが、昔は濃厚な味が好まれたことなどからあまり売れず、贈答品にしたり、他の酒に混ぜて売ったりしていたという。島崎さんの父が「もったいない」と1970年から低温貯蔵を開始。99年からは第2次世界大戦末期に戦車工場として掘られた洞窟を貯蔵庫として利用し、熟成を続けている。

一方の和泉屋酒店は59年から3代続く地元の酒販店。近所の客から「プレゼントに友だちの生まれた年のワインがほしい」などと頼まれることが増え、2000年に「年号ワイン.com」のサイトを立ち上げ、ビンテージワインの販売に注力してきた。

栗原周平社長(45)が昨年、旧知の島崎さんが長期熟成酒の魅力を語ったワイン雑誌の記事を見つけて島崎さんに連絡。「『年号ワイン』で培った、年代ものの酒を売る手法を、日本酒でも生かしたかった」と栗原さん。

幾度かの日本酒ブームを経た後も長期熟成酒の市場は大きくはならず、島崎酒造の貯蔵庫には毎年、熟成酒がたまる一方だった。自社でも販売に乗り出したが売れ行きは限られ、知名度のある年号ワイン.comで販売を決め、「歳月」の蔵出しとなった。

就職や結婚、出産などの記念に購入する人が多く、大手自動車メーカーが車の販売開始年と直近の年の酒をセットにしてパーティーの記念品としたことも。

全国の酒造業者や酒販店が参加する長期熟成酒研究会の伊藤淳事務局長(49)は「大吟醸、長期熟成と、ぜいたくにぜいたくを重ねた酒。大吟醸の熟成酒で、連続した年のものをシリーズ販売したのは聞いたことがない」と話す。「熟成古酒を楽しむ人が増えるきっかけになってくれれば」

詳しくは年号ワイン.com(//www.nengou-wine.com/)。(平井茂雄)

〈長期熟成酒〉 長期熟成酒研究会によると、鎌倉や江戸時代の文献に「古酒」の記述があり、当時は寝かせた酒ほど珍重されたという。しかし明治政府が酒を造った時点で課税する「造石税」を導入したため、在庫を抱えるリスクを嫌った酒蔵は熟成させずに新酒を出荷するようになり、戦後の同税廃止後も熟成酒の広がりは鈍かった。純米酒や吟醸酒のような法定の基準はないが、同会では「満3年以上蔵元で熟成させた、糖類添加酒を除く清酒」を熟成古酒と定義している。

朝日新聞