土壌

土壌

土壌について

土壌は一般に作物が育つ基盤の要素で、岩石などが風化した無機物と、動植物や微生物が分解された有機物の混成によって構成されており、土壌のタイプはワインに少なからずの影響を与えると考えられています。
ボルドー地方でブドウを新たに植樹する際には深さ60センチ程度耕作されるようですが、"土壌の育ちの良さ"は特にフランスなどではとても重視されており、概念としては人間が耕せる範囲以下の地層の構成までもがその範囲となっています。もともとワイン用のブドウは一般にやせた土地で栽培されます。
そしてまた近年脚光を浴びているような特殊な農法でなければ丹念に除草され、毎年のようにブドウを実らせるので、土の中の有機物が豊富な地層の範囲はほとんどないのが理想とされています。
日当たりと水捌けが良く、蓄熱性が高いのが理想的なタイプとされています。
表面に石の多い土地が好まれるのはこのためです。
石は昼間に蓄熱し、夜間に放熱する作用があるからです。

フランス・コート・ド・ボーヌの土壌

写真:フランス・コート・ド・ボーヌの土壌

メドック地区などボルドー地方の赤ワインの名産地はジロンド河の流域にあり、小石混じりの本当は痩せた土地です。
石灰質が多い小石混じりの土壌は水捌けを良くし、石の蓄熱性と、排水性、そして石灰質のもつミネラル分や複雑さを享受しています。

黒板に書くチョークと同じ成分を持つ白亜質や石灰質の恩恵が一番語られるのは、辛口白ワインの代名詞にもなるシャブリでしょうか。
どちらの地質も白亜紀のプランクトンや貝殻などの遺骸が地層になったものでワイン用ブドウ造りには非常に適しています。
石灰質で構成される土地のワインはそのような理由からふくよかになります。
また小石や砂利やシルト、粘土といった河原をイメージさせる粒子がブドウの樹の生える土壌に固有に混じっています。
その混ざり具合が味わいに個性を与えるようです。

ちなみにシャトー・オーブリオンなどがある「グラーブ」という地名は「砂利」という意味をもっています。
またこれらの粒子(要素)の固まりは団粒と呼ばれ、水捌けと保水性という相反する要素を可能とする土壌の秘密になっています。
砂の多い土地のワインは軽くなります。
粘土質の土地のワインはがっちりとしており、火山灰の土地のワインは生き生きとした酸を持っています。
現在ヨーロッパのEU各国ではワイン用のブドウの樹への灌漑は禁止されていますが、乾燥の度合いの高い新世界ワインでは広く行われています。

技術の進歩は土壌へも新たな変化をもたらしています。
酸性雨や砂漠化で広く知られるところですが、土壌が酸に傾くと様々な弊害が起きるので土壌のph調整(酸化してしまった土壌の中和)のために畑に水酸化カルシウムや炭酸カルシウムを散布することがあります。
逆にアルカリ性のある石灰分に富んだ土質には鉄分不足を補う目的で硫黄溶液を散布します。
鉄分不足に陥ったブドウの葉には黄色い斑点が発生し、光合成が出来なくなり、収量が不足するからです。